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「雨にむかひて月を恋ひ」を恋ふ

「雨にむかひて月を恋ひ」を恋ふ

大東文化大学、書道研究所発行「大東書道」に巻頭文を書かせて頂きました。以下その文です。

現代の道具を設え、豊かで楽しい茶の湯を切望していた頃。あるギャラリーで、四方切合のモダンな風炉釜に一目惚れしました。
その作品に、徒然草の一節「雨にむかひて月を恋ひ」と箱書きした主、インテリア・デザイナー内田繁氏との出会いは、現代茶湯の新たな方向性を垣間見る初めの一歩でした。

今年8年目を迎える「現代茶の湯の道具展」とその茶会を始め、クールな黒い茶室「山居」がデヴューしたミラノ・サローネ(2002)、大鼓の音が空間に結界を張り、書家が綴った「古田織部 百の茶の湯の心得」の一文が立ち上がって、六曲一双の屏風と化した吉野の茶会、メトロポリタン美術館「織部展」(2003)、そして近年では、5体の「触れる地球儀」と茶室「行庵」、立礼卓の設えで魅せた、洞爺湖サミット「地球茶室」(2008)等、お手伝いの傍ら、現代の設えの真骨頂を目の当たりにしてきました。

私はそこに、独自性を持つ文化としての、茶の湯の懐の深さを感じています。
自然に耳を傾け質素である事を美に転換し、豊かな心の交流にまで高めるという精神性は、下山の時代を迎えた今でこそ求められている姿勢かもしれません。
降る雨の向うに見えない月を見る。
この思想と美意識こそ、世界に誇るジャパンの神髄。
儚く侘しく切なくそして楽しい!そんな茶の湯を表現したいと恋ふる昨今です。

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